大人の時間軸と子どもの時間軸

 保育園で朝の登園風景を見ていると、「早くしないと勤務時間に間に合わないよ」と心の中でつぶやいている保護者の方に出会う機会があります。
大人は子どもに対して「言われる前に動いて欲しい」と求めがちですが、まだまだ人生経験の浅い子どもたちは、『時間の感じ方』も大人とは異なります。その仕組みを理解すると、大人はもっとおおらかに「子どもの時間」を見守ることが出来るようになると思います。子どもが体感する「子ども時間」と大人が体感する「大人時間」の違いに付いて触れてみたいと思います。

 時間の長さを自分で判断することは、明確な情報がないのでとても難しいことです。それを生活の中で自分の感覚に合わせて学習していかなくてはなりません。実はこのことはかなり高度なことです。
個人差はありますが、一般的に『昨日・今日・明日』といった過去と未来の感覚がついてくるのが6歳くらいと言われています。
小学校に入学すると「時間割」に出会い、今度は「時計の時間に合わせる」生活に慣れる練習が始まります。時間が読めるようになっても、それで時間感覚が身につく訳ではありません。
まだ時計の時間を使い慣れていないので、イベント(体験)の数に従った長さの評価が主体になりがちです。時計を見なくても「そろそろ1時間くらい経ったかな」という感覚が身につくようになるには、9~10歳頃になります。子どもの時間に対する感覚は、様々な体験を通して成長します。

 乳幼児期は、保護者が忍耐強く「待つことを大切に」して下さい。
子どもの意思を尊重し、最初の一歩を子ども自身が踏み出し、それを大人がじっと見守ることが大切なのです。

モンテッソーリ教育とは

 モンテッソーリ教育の歴史は、マリア・モンテッソーリが医師として障がい児と出会ったところから始まります。
障がいを持った子どもを観察するところから出発し、その後健常児と関わる中で、「子どもには自らを育てる力が備わっている」ということに気付き、独自の教育法を確立してきました。
医師としての科学的知識と子どもへの深い愛情に基づいたこの教育法は、イタリアのローマから世界140ヶ国以上の国々へ広まっていき、100年以上にわたり世界の教育現場で受け継がれています。

 モンテッソーリが何よりも大切にしたことは、「教育の主体は教師や親ではなく、子どもだ。」ということです。
そして、子どもには教え込まなくても吸収できる『自己教育力』が備わっています。幼少期にはある特定の事柄に対して吸収しやすい時期、敏感になる時期があります。これをモンテッソーリは「敏感期」と名付けました。
人間には言語や運動、感覚などの敏感期がプログラムされており、自己教育力を発揮できる環境を整えることで、子どもは自ら学んで出来るようになる。
これがモンテッソーリ教育の基本的な考え方です。

 モンテッソーリは、「子どもには課せられた宿題がある」と言っています。
そして、それは「発達を遂げなさい」という宿題です。
敏感期の子どもたちは、興味あるものに出合うと集中して取り組み、繰り返し行います。この状態を「集中現象」といい、子どもの発達に欠かせないものです。発達とは色んなことが出来るようになることです。
発達段階に見合った環境を準備すれば、子どもは自分が今必要としていること、発達の課題を見つけ出し、自分から関わり、主体的に繰り返します。
この繰り返しが、「できた」「わかった」という達成感、喜びに繋がっていきます。

 集中現象を経験した子どもは、他の子に優しくなったり、他の子と分かち合ったりなど、これまでなかった面が見られるようになります。
内面の成長に繋がることから、モンテッソーリ教育では「集中現象」を教育のカギと位置付けています。
モンテッソーリ教育の究極の目的は、平和な社会の構築です。
自己が確立し、自立した人間が、他者と協調して相互に共存しながら調和のとれた社会をつくっていく、その社会は平和な社会になると確信しています。

子ども同士の中で育つものって?

兄弟の中、地域の中で育つ子どもたち。
その中では、子どもがお兄さんやお姉さんの真似をしようとする姿が見られます。
異なる年齢の子ども同士の触れ合いは、自然と自分より小さい友だちを思いやる気持ち、
困っていたら助けてあげようとする優しさを育てます。
そんな思いやりや優しさは、子ども同士の関わりの中でこそ育っていくと思います。