自分で自分を育てていく

秋桜

 「たっぷりと愛情を注いであげて下さい」というのは、子どもについて書かれた本や子どもに関するアドバイスなどでよく目にし、耳にするフレーズです。

 たいていの場合、親には元々溢れるほどの愛情があるので、「やっぱり子どもにはたっぷりの愛情が必要なんだ」と再確認します。そこで、子どもの快適さを追求してさらに衣食住に気を配り、子どもが喜ぶものを与え、病気にならないよう、怪我をしないように、友だちに嫌われないように、勉強で困らないように・・・と、その愛情を「転ばぬ先の杖」にして、子どもに差出しているのではないでしょうか。

 そして、いつも子どものことを考え、子どもの将来を考え、献身的に行動している自分を、また反対に厳しくしつけて、親の言うことをよく聞く良い子に育てている自分を、「親としての責任を果たしている」と思いたがっているのではありませんか。

 しかし、子どもに注がなければならないのは、そういう類の愛情ではありません。
子どもに必要なのは、甘やかすことでも親が決めたゴールに向かって歩く従順さでもなく、自立して自分の人生を切り開いていく力、人を思いやる心、様々な難題に直面した時、それを自分で乗り越えられる強さと自信です。

 こうした能力を一つ一つ身に付けていかなければならない子ども時代に、「転ばぬ先の杖」は不要どころか有害なもの。
溢れる愛情は、子どもが「自分で自分を育てていく」姿をしっかりと見守り、応援することに使ってあげて下さい。

 

読書の秋がやってきた

 乳幼児にとって絵本は、役に立つ・ためになるといったものではなく、「楽しみ」そのものだと思います。一冊の絵本が、子どもに与える楽しみと喜びの大きさによって、その中味は深く心に残り、子どもを本好きにする原動力となります。

 絵本は、子どもに読ませる本ではなく、「大人が子どもに読んであげる本」であると考えて下さい。親と子の絆が問題になっている現代の家庭において、家族ができるだけ夕食を共にすることと、絵本を読んであげることとが、子どもの成長に大きな拠りどころを与えます。絵本は、親と子が心を開き、通い合わせる心の広場です。