これからの社会が求めている人間像

 20世紀は、知識集約・知識偏重型の教育でした。答えが既に分かっているものをどう解くか。そんな力を伸ばすための教育が中心でした。
でも、これから必要なのは、答えが見つかってない問いに対して、情報を集め、人と意見を交換しながら斬新な考えを出せる知性、そしてそれを上手にプレゼンし、協働できる能力だと言われています。

 皆さんは、「認知能力」と「非認知能力」という言葉をご存じですか。
認知能力とは、記憶力や思考力などに代表される知性と言えるものです。つまり、IQと言われる知能指数のことです。非認知能力は、情動や感情に関連する能力で、EQと言われる情動指数のことです。
今までは、認知能力が高い人が将来、社会で成功すると考えられていました。
しかし、非認知能力が高い人の方が、大人になってから社会的・経済的に成功している人が多いというデータが出ています。特に、乳幼児期に非認知能力が高まると、それが生涯に渡り影響し続ける可能性が高いことをヘックマン博士(ノーベル経済学賞)の研究が証明しています。

 ・難しい課題を前にしても諦めずやり抜こうとする忍耐力~やりたいことをやらせて
 ・他者を受入れながら相互に対話して協力できる社会性~いいね。こうやったらどう
 ・気持ちをコントロールできる自信や楽観性~失敗しても大丈夫だよ

非認知能力は、脳の奥にある大脳辺縁系や脳幹部と密接に関係しています。乳幼児期に大人から応答的で丁寧な関わりを受けていると、この部位が健全に育っていきます。
子どもは大人との愛着・信頼関係を結び、「自分はいつでも受入れてもらえる存在」「存在価値のある人間」という『自己肯定感』を育てていきます。それを根っことして、「何があっても私は大丈夫」「頑張ってやってみよう」という前向きな情動や向上心を育てていくのです。幼少期に培われるこの情動が、非認知能力の基礎です。
成長とともに、この大脳辺縁系等の感覚や非認知の情動は、「思考力・記憶力・計画性」などを司る前頭連合野と呼ばれる脳の部位と神経ネットワークでしっかり繋がっていきます。

歌をとおして感性豊かな子どもを育てる

 令和1年10月に福岡県久留米市にある正進幼稚園の園児の活動を見学した時に、子どもたちの音域の広さ、体幹が育ち、素晴らしい歌声に感動しました。
幼稚園の園長先生から毎日の朝の会・帰りの会での井上式の発声練習を3分ほど3年間繰り返すことで歌声が変わってきたことをお聞きしました。その後、理事長として子どもたちの活動を充実させたく、半年かけて声楽の先生を捜しました。

 令和2年4月から毎月、園児の声楽指導に 丸井 晋子 先生に来て頂き、感性豊かな子どもを育てる為に、お力を借りることにしました。
先生は大学の声楽科を卒業後、オペラ公演やソプラノ歌手としてコンサート出演、高等学校講師として活躍されてきました。

 丸井先生から保護者の方に少しばかりお話をして頂きます。
私は音楽講師・声楽家ですので音楽は私の生活に欠かせないものでありますが、園児の皆さんにも音楽は生きていく上で楽しい時も、悲しい時も口ずさみ、自分を元気にする大切なものであって欲しいと願っています。
毎月の指導において、声と身体を響かせ歌うことに喜びを感じている園児さんから私が元気を頂いています。
同じフレーズを歌うコミュニケーションがもたらす「みんなと一緒に歌ったら楽しい」という気持ちは、園児さんたちに安心と情緒の安定をもたらします。
4、5歳児さんの指導では私からの一方的な指導だけでなく、アクティブラーニングを取り入れて園児さん自身が考え、意見を出し合う時間を作っています。園児さんの発想は素直で柔軟で、大人の私からは想像もつかないような素晴らしい意見が飛び交います。お友だちの考えを肯定的に捉え、良い演奏が出来るように頑張ろう・協力しようという時間はとても楽しい時間でもあり、深い学びやコミュニケーション能力の向上に繋がります。

 近年、日本人の若者は諸外国に比べて自己肯定感が低いというデータがありますが、
皆で「心を通わせて」歌う姿、互いの意見を聴き合い、認め合う姿をみていると、この保育園の園児さんは自己肯定感がとても高いように感じています。
音楽をとおしてお友だちとコミュニケーションをとり、音楽を愛好して頂けるように指導させて頂きたいと思っています。