人間らしさ

 子どもが育つ道すじに、多様な大人のかかわり合いをつくりだすことで、育つ主体の子どもが育てる主体の親へと成長していけるように、みんなで支える関係をつくりだしていくことがとても大切です。

 子どもと関わることで、大人は元気になります。
これは、生きるエネルギーが高いところから、低いところへ流れた証拠です。
「子ども力」が大人を元気にし、子どもは大人に元気をわけたぶん、落ち着きを手に入れ、大人になっていきます。このように世の中は、持ちつ持たれつの関係にあると思います。

 子育ても、大人から子どもへ一方的にしてあげることと思ってきたけれど、実は大人も子どもからいろんなことを教えてもらうことで、親として育っていくということです。

 もうひとつ大事なのは、大人は社会のルールでがんじがらめになって、人間らしく生きにくいけれど、子どもはそのルールに縛られないぶん純粋だし、人間として自然体で生きていられます。
だから、子どもが子どもらしくしていることが大事だし、その子どもと付き合うことで、大人が忘れかけている「人間らしさ」を学ぶことができて、私たち大人も人間的に豊かになれます。

しっかり抱いて、下におろして、歩かせる

 子どもは、起居をともにする一番信頼できる大人に甘え、依存し、やがて反抗期を通して自立していきます。親に甘え、依存し、反抗することは、子どもの成長に不可欠なプロセスなのです。このことを、日本人は「しっかり抱いて、下におろして、歩かせる」という言葉で語り継いできました。
この格言は、子どもの発達段階に応じた親の関わり方の本質を端的についています。

 3歳までは、母親との安定した感覚的・心理的結びつきが大切です。
「しっかり抱いて」とは、親に甘えて依存するという、母子の「愛着」形成の重要性を表しています。「愛着」の次に必要なのは、「下におろして、歩かせる」、すなわち愛着からの「分離」です。「愛着」が母性原理であるとすれば、「分離」は父性原理ということです。母性原理は「包み込む」はたらきであり、父性原理は「切る」はたらきと言い換えても良いでしょう。
あたたかく守られた場所から出て、自分の力で歩いていくためには、母性原理の「愛着」を断ち切る必要があるのです。

絵画をとおして感性豊かな子どもを育てる

 令和2年11月から毎月、園児の絵画指導に 江上 麻美 先生に来て頂き、感性豊かな子どもを育てる為に、お力を借りることにしました。(内部は令和3年4月から)
先生は三重大学教育学部美術教育学科を卒業後、小学校教諭として6年6ヶ月間勤務されました。

 江上先生から保護者の方に少しばかりお話をして頂きます。
私は園児の皆さんに様々な体験や刺激的な出会いを通して、心が動き絵画表現できる子どもになって欲しいと思います。
絵画教室の活動内容は、単に画用紙にクレヨンや絵の具で描く活動だけではなく、梱包材などに使われる巻きダンボールを用いたり、スポンジや歯ブラシといった筆ではない道具で絵を描いたりなど普段のお絵かきではなかなか取り入れないような材料や道具を使うよう心掛けています。
また、野菜など実物を目の前において描く活動も取り入れています。
いつもと違う材料を取り入れたり、目の前にあるものをよく観察し、特徴を探りながら描いたりする活動は、園児さんにとって大変刺激的な活動になるのではないかと思っています。

 毎回の活動の流れで大切にしていることは、活動の始めに園児さんを集め意見を出し合ったり、活動の終わりには作品を見合ったりする時間を作っています。お友だちが言っていたことをヒントに描いたり、出来上がったお友だちの作品を興味深く楽しそうに見たりする姿を見て、一人だけで活動するよりも多くのことを学び、刺激を受けながら表現していると実感します。
園児さんは、絵画活動に対して「やってみよう」という「ワクワク」した感情を持って取組んでくれています。このような絵画教室での様々な体験が園児さんの感性を豊かなものにすると私は考えます。
感性を磨く活動を通して、園児さんのより豊かな人生のいったんを担えれば幸いです。