北勢地域に三重県立大学を誘致

 三重県知事になられた 一見 勝之 氏が、所信表明として9月14日の中日新聞で述べられた文章です。高校卒業者を中心に、県内から毎年四千人前後が大都市圏などへ流出する人口減への対策も急がれる。県は「三重県立大学」の新設を検討しているが、卒業後も定着してもらうためには、魅力ある就職先づくりも必要になる。

 このコメントは、一年前の令和2年8月29日に行われた前知事 鈴木 英敬 氏と松阪市長 竹上 真人 氏との松阪市内での対談に由来しています。
前知事は、新型コロナウイルス禍を東京一極集中是正の好機と捉えて「三重県立大学の新設の可否をしっかり検討していきたい」と表明されました。昨年度の県内の大学進学者に対する大学定員の割合は39.6%で全国最下位レベルです。
人口減少対策で公立大学が、若者の引き止め役として期待されています。
そして、前知事は「県内の高校生は8000人が4年生大学へ進学し、うち県内の大学は2割の1600人で8割が県外です。県内の大学定員は3200人分しかなく、大学進学者収容力は長野県・和歌山県と並ぶワーストスリーに入るぐらい少ない」「魅力ある大学が県内にできることは進学の選択肢が増え、地元就職に効果が高い」と現状を説明されました。
また、令和2年9月17日の県議会本会議でも「感染症の影響で人々の関心が地方に向き始めている、この機会に三重県立大学設置の是非の検討に着手したい」と前知事は述べられました。

 前知事からバトンタッチを受けた 一見 勝之 知事が、所信表明で述べたことから推測できることは、この構想が実現される可能性は高いように思います。

 三重県下に保育士・幼稚園教諭養成校は6ヵ所あり定員合計415名で、乳幼児の施設は保育園・幼稚園・認定こども園を合わせて604校あります。
養成校の定員合計より大幅に施設の数が多く、慢性的保育士不足が10年ほど前から続いています。近隣の県においては愛知県41校・静岡県17校・岐阜県10校あり、三重県は、全国的にも保育士・幼稚園教諭養成校が極端に少ない状況です。

 経済力のある30万都市の四日市市に三重県立大学を誘致し、三重大学には無い特色ある学部を備えた総合大学に幼児教育学科をつくることを希望します。
質の高い学生が、愛知県を含めて都会に流れることを阻止し、保育士の確保、地域経済の活性化、雇用の拡大、産業の発展などを目的として積極的に企業の参画に取り組んでいけるのは、三重県下では四日市市・鈴鹿市しかありません。

 北勢地域においては、四日市市に半導体のキオクシア・住友電装・JSR・日本トランスシティ・昭和石油・太陽化学、鈴鹿市にホンダ鈴鹿製作所・旭化成・大日本住友製薬・AGF・モビリティランドなど卒業後の就職先の大企業も多くあり、北勢地域に社会人として定着してくれることを願っています。

 学生確保も大変かもしれませんが、特色ある学部を設置することで京都先端科学大学(理事長 永守 重信・日本電産会長)のような良き前例もあります。

中日新聞 令和3年10月28日より

 新たな県立大学の設置を検討している三重県は10月25日に高校2年生とその保護者計32,000人へのニーズ調査の結果を明らかにした。県内に公立大学が新設された場合、進学を考える生徒が5割ほどおり、三重県は一定のニーズがあるとした。

 三重県議会戦略企画雇用経済委員会で同日、六月・七月に調査した結果を報告した。
大学や短大への進学を希望する生徒8,671人のうち、49.2%の4,268人が、「新設の公立大学を進学先の候補として考える」と回答した。

 一方、大学などに進学を希望する生徒の保護者7,678人のうち、82.0%の6,299人が候補として考えると回答した。生徒と保護者いずれも候補として考える理由では、「自宅から通える」「学費が安いイメージがある」「公立大学なので安心感がある」の三つが上位を占めた。大学などに進学を希望する生徒では、希望度が高い専門分野に「工学」「商学・経済学・経営学」を挙げる人が多く、三重県は「この二分野は設置学部の有力な候補になる」とした。三重県立大学の新設を議論している有識者会議は、令和4年3月末日までに必要性や有効性を県に提案し、三重県は令和4年度中に、新設の是非や設置場所、規模などの方針を示す。

県立大学設置の是非を検討する有識者会議の議事概要 令和3年6月8日より

  • 三重県で学ぶことの優位性は、三重県というフィールドを教育の場にできることにあると考える。三重県を、社会の最先端の課題を解決するリアルなフィールドの場として開放していく。県として、県内産業をこうしていきたいという方針と連動することも可能であると考える。
  • 県が育成をするのであれば、産業を新しく興すような県が必要とする人材ではないかという考え方もある。
  • 海外の事例でいうと、アメリカでは一つの州に複数の州立大学が設置されており、手厚い教育により人材を育成し、地元企業に人材を供給する役割を果たしている。その意味からも、県立大学については検討の余地がある。