「あと伸びする力を育む」~最初の一歩は子どもの意志で

 子どもは、沢山の可能性を持って生まれてきました。
お子さんの持っている良さや可能性を伸ばして、「あと伸びする子どもを育てる」というテーマで話しをしたいと思います。
今から30年程前に私は、認可外保育園をしながら、小学生や中学生、そして受験生の子どもたちを幼児教室で10年間程教えていた時期があります。
子どもたちの中には、小学校時代は勉強ができたのに中学校になったら成績が伸びない。逆に小学校時代はパッとしなかったのに中学校になったら急に成績が上がる、いわゆる
「あと伸び」をする子どもを沢山見てきました。
両者にはどんな違いがあるのでしょうか。

 幼い時に何かに熱中した経験があるかどうか。
これが、「あと伸びする子ども」と「そうでない子ども」の違いだと私は思います。
あと伸びする子どもは、エネルギーにあふれています。
体力だけでなく、好奇心や自分を高めていく小さな成功体験をいっぱい乳幼児期に経験し、心が育っていることがポイントであるように思います。このエネルギーを生み出すのは、幼い時に好きなことを好きなだけやった経験が重要です。
幼い子どもが好きなことというと、たいていは「遊び」になりますがそれでよいと思います。「何をするか」ではなく、「何かに熱中すること」が大切なのです。

 その時に、子どもが信頼を寄せている大人の関わり方が重要になります。
関わり方次第で子どもの中に「あと伸びする力」が蓄えられていきますが、反対に「あと伸びする芽」を摘んでしまうこともあります。
子どもの意思を尊重し、最初の一歩を子ども自身が踏み出し、それを大人はじっと見守ることが大切なのです。
幼い時から大人から指示を多く投げかけられた子どもは、「あと伸びする子ども」には育たないように思います。

 次に、「あと伸びする力」には様々な力が考えられますが、具体的にはどんな力があるか触れてみたいと思います。
 一つ目は、子どもの自立しようとする心です。
ひとりで出来ることが増えてきた2・3歳児は、衣服の着脱において「自分でやる」と言い張って一人でやろうとします。上手くできなくても、何度も繰り返し、出来るようになった自分の力を試そうとする気持ちに溢れています。
このような気持ちが、「自立しようとする心」に繋がり、「あと伸びする力」となっていきます。
 二つ目は、生きる世界を探求する目を育てていくことです。
子どもは好奇心旺盛で、何時も身の回りのことに興味を持ち、不思議に思ったことを「なぜ?」「どうして?」と尋ねてきます。
こうした環境を探求する姿そのものが、「生きる世界を探求する目」に繋がっていきます。
 三つ目は、人との関わりの中で味わう葛藤の体験です。
この時期は友だちとの遊びの中で互いに主張を譲らず、喧嘩になることがしばしばあります。大人が上手に関わることで、対立しながらも「この子と一緒に遊ぶためにどうしたらよいか」と子どもなりに考えることが出来るようになっていきます。
まさに「葛藤や挫折」の体験が、人間関係を学ぶ機会となっていくのです。

 幼児期には、このような「あと伸びする力」となる心情・意欲・態度を大切に育てていきたいと考えています。そして、自分の人生を自分で切り開いていける心を「モンテッソーリ教育」で培って欲しいと思います。