知能とは何か

梅

 私の考える幼児教育についてお話しさせて頂きます。

禅宗の教えの中に、「啐啄同時」(そったくどうじ)という言葉があります。

これは、二つのものが機を得て相応じること。すなわち、逃してはならない最良の時期を意味しています。鶏の卵がふ化しようとする時、親鳥は外側から殻を突き、ひな鳥は内側から殻を割ろうとします。つまり、タイミング良く対応することの大切さをこの言葉は説いています。

 このことは、人間の子育てにも当てはまります。子どもはそれぞれの能力や性格が異なるように、教育や躾もその子どもに応じたものでなければなりません。

人間は生まれながらにして、探求反射と模倣反射を持っています。

人間が本来持っている内なる力を利用し、持っている力を大きく伸ばしてあげる教育、それが私どもの目指している教育です。

 以前は、頭の良し悪しは生まれつきのものと考えられていましたが、けっしてそうではありません。遺伝に左右されるのは、大脳辺縁系と脳幹にあたる旧皮質(生命の座・本性の座)であり、遺伝に関係のない大脳皮質にあたる新皮質(知能の座)が重要になります。

 下等動物から高等動物へ進むに従い、新皮質に該当するものがだんだん大きくなってきて人に至っています。つまり、大脳皮質の発達を促しその機能を高めることが私どもの目的であって、知識を与えることが目的ではありません。

 また、知能の高い・低いは、生まれ育った環境で大きく変化することを再認識して下さい。つまり、環境が子どもを育てるのです。

 そして、もう一つ大切なのは、身体の発達に比べて、脳は大変早い時期に発達するということです。新生児の脳重量は平均360gであり、全体重の10分の1が脳の重さとなります。3歳で約1000g、12歳でほとんど大人と同じ位の1350gになります。つまり、人間の脳重量は一生のうちに990g増えるだけなのです。

 脳重量の発達は、脳細胞の発達であると考えて頂ければ結構です。

脳細胞が発達するということは、樹状突起が発達して回路が形成していくことと、髄鞘(ずいしょう)が発達してその回路が整頓されていくことと考えてよいと思います。

その髄鞘の発達は、2歳から3歳位までに急速に行われ、この時期に子ども達の集中力が急に発達するところを見ると、この髄鞘化は集中力と深い関係があると推測できるように思います。

こういった科学的根拠を踏まえて、記憶の記銘力が伸びる2歳児の活動が考えられています。また同様に、科学的根拠を持って各学年の活動を進めています。

 以上の点から、0歳から就学前までの幼児教育のあり方を考え、「適切な時期に適切な指導をし、子ども自身の内に秘めた伸びる芽を大きく育ててあげる」という理念に基づいて、私ども職員は一人ひとりの子どもが、それぞれに自分なりの「心の名画」を描いて育ってくれることを楽しみにしております。