金子 みすず 童謡集より

 子どもは大人の始めです。子どもは人間の始まりです。
子どもでなかった大人はありません。
大人にならない子どもも、いないはずです。
 大人に成長していくに従って、私たちは、子どもから始まった自分だと言うことを、ついつい忘れがちです。大人に成長していくうちに、子どもから始まった自分だということをいつも思い出しているわけにもいきません。
しかし、思い出そうとも、忘れようとも、子どもは大人の始めですし、子どもは人間の始まりなのです。
 大人になっていくに従って私たちは、色々なことがらを学びます。
ところでどうでしょう、子どもの頃しか感じなかった楽しいこと、
子どもだったからこそ空想することのできた素晴らしいこと、
それは子どもから始まった自分だったことを忘れるのと一緒に、忘れがちです。
 このような不思議さに気付いたイギリスの詩人ワーズワスは言っています。
「子どもこそ大人の父」だと。

金子 みすず 童謡集より

乳児期から就学までの保護者支援

 親が目に見えやすい「できる・できない」にとらわれ過ぎた教育的側面の成果ばかりを期待することは、子どもの「親の期待に添わないと受け止めてもらえない」という意識を生みます。
親の期待と自分の思いとのズレの繰返しは、不信感や自信喪失の蓄積になっていくのです。
 しかし、親という立場はとかく子どもの出来栄えが気がかりで、結果が良ければそれが成長の証しであるかのように思いやすいものです。
このような親子の思いのズレを出来るだけ少なくするために、保護者支援を通して「子どもは自分の思いに共感されて、尊重される中でのびのびと自分を発揮できる環境が与えられれば、自ずと上手になりたい、もっと難しいことをやりたい」と思うものです。
「他の子どもと比べずに、自分の子どもをじっと見守ってあげることが大切である」ということを伝えたりすることで保護者の気持ちも変わって欲しいと思います。
 今の保護者のほとんどが、子どものことを知る機会がないままに大人になりました。
子どもを育てる立場になって初めて本を買ったり、インターネットで調べたり、ママ友と情報交換したりしていますが、世代が近過ぎて実際の悩み解決にならないことも多いようです。
そして、「失敗しないよう」に、「決められた通り」に、「みんなと同じことを早く出来るようになる」ことを求められた世代であり、「努力したら報われる」ということを幼いころから教えられて育ってきました。
 また、一方では欲しいものがすぐ手に入る便利な生活の中で、理不尽なものにあまり出会うことなく、我慢せずに欲求が満たされる時代でもありました。
ある意味では、「待つことが苦手な世代」であると言えるかもしれません。
だけど、子育ては予定が覆されることの連続ですから、そのような場面(離乳食・トイレトレーニングなど)に直面すると、待てずに答えを早く求めたくなり、予定通りにいかないことにいらだちを感じ、「自分の努力に対して、結果で答えを出してくれる子どもは良い子」という思い込みの中で、試行錯誤する過程を省いて、結果だけを重視する保護者が多いように感じます。
 保護者が育った時代がどのようであっても、子どもの育ちは経済曲線のように右肩上がりではなく、人は皆違っていて当たり前であり、他の子どもと比べることは意味がないことなどを子どもの発達を踏まえて話し合えるような関係づくりが、「真の保護者支援」であるように思います。
そうすることによって、親として必要以上の気負いがなくなり、周囲の評価を気にすることもなく、我が子の育ちを安心して見守ることが出来るようになると信じています。
 最後に、保育士の専門性を持って、子ども一人ひとりの特性を見極めて理解し尊重していくことで、子どもは心地良い経験を積み重ねていき、信頼感が育ち、のびのびと本来持っている力を発揮していきます。このように我が子の姿の変化を確認できた保護者もまた、保育士に信頼感が持てるようになり、子育ての良きパートナーとして受け入れてくれるようになると思います。

生きがい

 心を込めて作った料理が、「家族の人に美味しい」と言ってもらえたら嬉しい。試行錯誤を重ねて開発した商品が認められ、世に受け入れられると今までの苦労も吹き飛ぶ。
その時全力を尽くした満足感もあるけれど、何よりも嬉しいのは自分の行いが人の役に立ち、喜んでもらえたと実感できることである。人に喜びを与えることに喜びを感じる。
それは人間の持って生まれた一つの本性だと言えよう。
人間が本来持っている優れた特質をお互いに今どれだけ発揮しているだろうか。
自分のことしか関心がない、自分の損得が最優先、そんな姿に堕落してはいないか。
自己を犠牲にしてまで他人に尽くす必要はないが、人を喜ばせたいという思いで、自分に出来ることを懸命になす。
どうすれば周囲の人に喜んでもらえるのかを常に考え行動する。
一人ひとりのそうした生き方が、それぞれの生きる励みに繋がっていく。
そして、そこから潤いと笑顔に満ちた家庭や職場、また社会が生まれてくるのです。
人に喜ばれることを、喜ぶ心をお互いに取り戻したい。