我が子への贈り物

 生まれたばかりのか弱く小さい我が子を初めて胸に抱いた日、誰もが「幸せになって」と心の底から祈ります。
これから楽しいことをいっぱいして、わくわくするような経験を沢山して、いい友だちや幸せな時間を手に入れて、「ああ、生まれてきてよかった」と思って欲しい。
 そしてそこから親の奮闘は始まります。
子どもの為に出来る限り清潔で快適な環境を整え、「良い」と思うものだけを与え、「良い」と聞いたことをあれこれ試して、小さい頃から「良い」体験を沢山させようと頑張ります。
でも、それは本当に子どもの為に「良い」ことでしょうか?
子どもに「幸せ」そのものをプレゼントすることは、実はできません。
子どもは自分の力で幸せになるのです。
大人にできることは、子どもが幸せを手に入れる為のシンプルで強い、時を経ても変わらない、本物の道具を渡してあげることです。
 子どもが自分を高め、やがて友だちや愛、知性など、お金では買えない大切なものを手に入れる為の道具・・・。
それは好奇心、希望、一生懸命頑張る心、自分を大切に思う心、人を大切に思う心、そして困難を乗り越える力です。
 だから人生の土台となる乳幼児期に、子どもが正しい方向へ「生きる力」「伸びる力」を身に付けられる環境を作ることこそが、大人に出来るたった一つの、そして最上のプレゼントなのではないかと思います。

日本人の美徳

 日本では、「人に迷惑をかけない」といった考え方が美徳とされています。
文化人類学者のルース・ベネディクト氏は、自著の中で日本には「恥の文化」が存在し、世間体など他人を気にする国民性であると述べています。
 欧米では、「自分が迷惑をかける分、相手の迷惑にも許容範囲を広く持つ」という考え方が一般的だと言います。
一方、日本では、「周りの人から自分がどう見られるのか」という考えが根づいているというのです。「人に迷惑をかけない」という行為は、人目を気にするあまり、相手を頼れないという面もあります。しかし見方を変えると、集団を尊重しながら「他人を思いやる」という一面も含まれるでしょう。
 職場で、お客様、同僚など、他人との関りがある中で相手を思いやることはとても重要です。一人ひとりが「他人を思いやる」という、日本人の国民性・美徳に誇りを持ちたいものです。

貴方が 私の子どもでいてくれて ありがとう

安心して傍にいられるから、自分のままでいることができるし、
貴方が大好きだから、自分の気持ちも大切にできます。
 一緒に笑って、泣いて、怒ってくれるお父さん、お母さんに、
心の中で、そっとありがとう。
 子どもにとっての幸せとは、そんな気持ちで、何時までもいられること。
その始まりは、「貴方が、私の子どもでいてくれて、ありがとう」と、子どもの心を抱きしめてあげること。

ビル・ゲイツから子どもたちに一言

 近頃は、とても便利な時代になりました。スマートフォンやタブレットが一つあれば世界中の情報が分かり、魅力的なアプリや音楽、ゲームのほかSNSなども好きな方は暇を持て余すことがありません。これらの魅力的な情報機器無くしては、今では生活が出来ないと思う人も多くいるのではないでしょうか。
大人の生活が変化したように、子どもを取り巻く環境や遊びにも大きな変化があります。
 乳幼児期の子どもの発達にとって必要なことは、「意志や目的を持った動作を繰返すこと」、「五感を通した実体験から世界を広げること」などが大切であると思います。
これらは、この時期の子どもだからこそ喜びを持って成し遂げることが出来るのです。昔の子どもは四季を五感で感じ、遊びを創意工夫しながら発展させ、沢山の失敗や成功を自然から学んできました。
今の時代は、アニメ・ユーチューブ・ゲームなどから子どもたちを切り離すことは出来ないかもしれません。
しかし幼児期の子どもにとって、それはまだ不必要なことです。
画面から飛び込んでくる映像より、実体験を通して感性を育てることが大切です。
私たち大人は、子どもに与えるべき環境を選択し制限する必要があります。
 あの有名なマイクロソフトのビル・ゲイツが、自分の子どもには14歳になるまでスマートフォンを与えず、14歳を迎えてからも使用時間を制限し、家族で過ごす時間や食事を大切にしていたことは有名な話です。情報機器を知り尽くした彼だからこそ、子どもに与える影響が良くないことを知っていたのかもしれません。どんなに時代が変わっても、子どもの発達の過程は変わりません。
私たち大人は、愛する子どもの為に与えるものを選択しましょう。