モンテッソーリ教育とは、二十世紀の初期にイタリアの医師、マリア・モンテッソーリによって、発達遅滞児や教育に恵まれない子どもを対象に始められた教育です。
医学的見地から子どもの療育を考え観察する中で、人間の形成、つまり「教育とは何か」を発見したのです。モンテッソーリの言う教育とは、教師が何かを教えるのではなく、子ども自身の内面からの生命の成長を助けることであり、子どもの自発性を尊重し、これを引き出すような環境や教材を整備することであるとしています。この教育は、子ども・教師・環境の三者一体で行われるので、「環境による教育」と言われています。そして、この三者一体の場では、子どもは自分の意志に基づいて行動する自由を保障されています。自立の獲得の過程で出てくる「敏感期」という時期において、教師は常日頃、子どもをよく観察し、この時期に適切な環境を整えて、子どもの要求を満たしてやらなければなりません。また、その時期は一過性のものである以上、それを逃すと取り返すのに大きな努力が必要となります。この教育法の具体的な分野は5つあります。「日常生活の練習」「感覚教育」「言語教育」「算数教育」「文化教育」です。
そして、子どもの成長に合わせた教具が考案されました。その教具は科学的、系統的な構造を持っており、中でも感覚教具の占める割合は大きく、子どもたちが教具を扱う中で各種の感覚が養われる仕組みになっています。このような活動の中から、やればできるという自覚が生まれ、自立へと向かって子どもは成長するのです。自立とは、「一人でやりたい」という意欲の表れであり、「一人でできた」という満足感の積み重ねによって形づくられていきます。
- 順序立てて ものを考えることが出来る
- 何をするにも計画を立て 順序を踏んで 着実に実行する
- 自分で決めたことは 集中して乗り越え 最後までやり遂げる
- 人の話をしっかり聞き 注意深く見る
- 状況の読み取りが速く 臨機応変に対処することが出来る
- 自分で興味を持ったものに意欲的に取り組む
- 自分がやりたいことがはっきりしている
- 他人の立場を考え 思いやりがある
子どもたちがそれぞれに 自分の芽を 息吹かせられるように
大人は豊かで あたたかい 土でありたい
ある農夫は、野菜が本来持っている味を最大限に引き出すために、野菜の種類に合わせて、今年こそは、きっと良い土を作ってみせると頑張っています。
子どもが、本来持っているものを最大限に引き出して育てるために、大人自身が豊かで、あたたかい土であって欲しいと思います。
これからの社会が求めている人間像
20世紀は、知識集約・知識偏重型の教育でした。答えが既に分かっているものをどう解くか。そんな力を伸ばすための教育が中心でした。
でも、これから必要なのは、答えが見つかってない問いに対して、情報を集め、人と意見を交換しながら斬新な考えを出せる知性、そしてそれを上手にプレゼンし、協働できる能力だと言われています。
皆さんは、「認知能力」と「非認知能力」という言葉をご存じですか。
認知能力とは、記憶力や思考力などに代表される知性と言えるものです。つまり、IQと言われる知能指数のことです。
非認知能力は、情動や感情に関連する能力で、EQと言われる情動指数のことです。
今までは、認知能力が高い人が将来、社会で成功すると考えられていました。
しかし、非認知能力が高い人の方が、大人になってから社会的・経済的に成功している人が多いというデータが出ています。
特に、乳幼児期に非認知能力が高まると、それが生涯に渡り影響し続ける可能性が高いことをヘックマン博士(ノーベル経済学賞)の研究が証明しています。
- 難しい課題を前にしても諦めずやり抜こうとする忍耐力~やりたいことをやらせて
- 他者を受入れながら相互に対話して協力できる社会性~いいね こうやったらどう
- 気持ちをコントロールできる自信や楽観性~失敗しても大丈夫だよ
非認知能力は、脳の奥にある大脳辺縁系や脳幹部と密接に関係しています。乳幼児期に大人から応答的で丁寧な関わりを受けていると、この部位が健全に育っていきます。
子どもは大人との愛着・信頼関係を結び、「自分はいつでも受入れてもらえる存在」「存在価値のある人間」という『自己肯定感』を育てていきます。それを根っことして、「何があっても私は大丈夫」「頑張ってやってみよう」という前向きな情動や向上心を育てていくのです。幼少期に培われるこの情動が、非認知能力の基礎です。成長と共に、この大脳辺縁系等の感覚や非認知の情動は、「思考力・記憶力・計画性」などをつかさどる前頭連合野と呼ばれる脳の部位と神経ネットワークでしっかり繋がっていきます。