「親になる」とは、どういうことでしょうか。
子どもが生まれて親になり、子どもを育てる。その子が成長してまた親になり、子を育てる。この繰り返しが人間の歴史であり、どんな時代になろうと変わらず続けられてきた営みです。
また「子育て」といいますが、子育ては、決して「親が子どもを育てる」という、一方向に限ったものではありません。
それは、子どもが大人へと成長するだけでなく、子どもを通じて学び、はぐくまれて、親も親としての成長を遂げていくものなのです。
子どもが生まれた時に、「親」という存在もまた誕生します。
子どもの人生が始まると同時に、「親」としての人生を歩み始めるのです。
親は最初から完成された、子育ての能力を持っているわけではありません。
始めから上手に子育てができる親は、一人もいないでしょう。
子どもが0歳の間は、親としても、まだ0歳なのです。
子どもが始めての経験を積み重ねて社会を知っていくように、親もまた、親としての経験を積み重ねて子どもと共に育っていきます。
その意味で、「子育ては親育て」でもあります。
親になることは、人生の豊かな実りを得るきっかけです。
親と子が、家庭の中で共に育ち、さらに多くの喜びや幸せを感じられるように、
親は「親としての学び」をすすめてみる必要があるのではないでしょうか。
「幼児教育の父」倉橋 惣三に学ぶ
日本における、大正から昭和期に活躍した教育者 倉橋 惣三 氏は、子どもの自発的な遊びを尊重する保育・教育を唱え、その理論は今でも政府方針などに生きています。
子どもたちは「自ら」育つ存在。だからこそ「自発的」「生活」「環境」が重要であり、子どもの内面に眼差しを向ける『心もち』が大切であると考えました。
子どもは未熟な大人なのではなく、今を新しく切り開く開拓者のような存在なのだと思います。傍にいる大人に求められるのは、子どもたちが何を感じ、何をしようとしているのか、それを分かろうとする姿勢です。
子どもたちは、興味を持ったものを手に取り、叩いたり、なめたり、転がしたり、そうやって関わる中で沢山のことに気づいていきます。
その時、傍にいる大人が子どもの探索を止めず、子どもたちが感じていることや見つけたことを共感的に受け止めたとしたら、子どもたちの探索はさらに深まり、やがて探求へと進んでいきます。
「できること」、「できたこと」の結果による子ども理解ではなく、子どもの心が優先される大人の関わりが重要視されます。親の願い、保育者の願いに沿った行動を重視するのではなく、まず子どもの思いを黙って聞く、受け止める、存在を認める、存在を喜ぶ、子どもを優しく包むように接し、寄り添うことが大切です。
子どもは寄り添ってもらった体験、認められた体験から「自己肯定感」が芽生え、大人を信頼するようになります。
わが子を抱きしめる 小さな体はもちろん 思いも 感情も
ぜんぶ抱きしめる それが一番のプレゼント
小さな時の思い出はあまり残らないけれど、あたたかい胸の中や膝の上で憶えた安心感は、いつまでも忘れません。
子どもが一番ほしいのは、あたたかさとやさしさと、信じてもらえる安心感。
だから、心の豊かな子どもに成長するためには、大人から豊かな心をいっぱいもらうことが大切なのです。